「フランスの思い出」 エントリーNo.8 Lombardini さん

エントリーNo.8 Lombardini さんです!

1.HN: Lombardini

2.滞在場所
パリ

3.滞在期間
欧州滞在2週間のうち3日

4.思い出をどうぞ!
ベルギードイツオランダと欧州4カ国を駆け足でめぐる二週間の旅行も残り二日。
毎日半日以上歩き回っているので、ふらふらになりながら、だったらパリはどうなのか。
と、最後の力を振り絞る。

4年前に来た時と同じ、アベスとピガールのちょうど中間にある、
アラブ人の経営するホテルに泊まる。テレビ、ルームサービスなし。
モーニングコールなど頼めないけれども、安くて広い良いホテルなのだ。

ホテルから歩いて数分のところに、服飾用の小物や布地を扱う店が軒を連ねる。
歌手やダンサー、ストリッパーなどの衣装などはここで一式そろえられそうなくらい、
羽根や仮面、派手な飾り物がそろっている。

ふと小さな骨董屋のショウウインドウを眺めていると、中にいた店主が声をかけてきた。

「中国人だろう。中国だったら仏陀買えや。8ユーロで良いよ。」
キーホルダー用の燻した銀色の小さい仏陀が二種類、
それぞれちょっとだけポーズの違うタイプで、
どっちの仏陀か買わないかと声をかけてきた。

黙って聞かぬふりしていると
「5ユーロ。。。じゃあ3ユーロで」と値がどんどん下がってきた。
そんな気分でもなかったので、すうっと店を出る。

店を出て10歩、あの店主の不敵な笑みと、ポケットサイズの仏陀が妙に引っかかる。
後ろ髪をたぐり寄せられるように、店に舞い戻り、
「2ユーロだったら買いますよ。」と値切ると、すんなりOKだった。

「俺、日本人なんだけどー。。。仏陀はインドなんだけどー。。。」
と店主に説明するも、
大して聞いてない。旅行最後のお守りにちょうどいいのを見つけた気分だった。

疲労とともに、金銭感覚、方向感覚、あらゆる感覚が緩くなってきて、旅の終わりの黄昏が訪れてきた。

二週間で得たもの、得損なったものをいろいろ思い出しながら、
最後どうかとんでもないオチなど用意されてませんように・・・とポケットの仏陀に祈る。

最終日、おそらくここが最高級だろうというジャズクラブ、ライオネルハンプトンに行く。
地図に載ってる街路が見つからないため、人に道を尋ねていたそのとき。

空から高級クラブには最も相応しくない固まりが降ってきて、ちょうどほほをかすめ、
肩から足下に落ちた。冷たく黄色い半液状の物質は、意外ににそれほど臭いは無かった。

道を尋ねた方の紳士は、「大丈夫だ。自然のものだから害はない。これでふけば良い。」
と極めて冷静に、持っていたタオルを貸してくれた。

聞いた道もすっかり忘れ、とりあえずその紳士に礼を言って別れる。
このままではどこの店にも入れないので、上着を脱ぎ捨て、いったんホテルに戻る。
シャワーを浴びて、服を着替えて、靴を新調し、旅の最後を締めくくるべく、
日が沈むのと同じ頃、また同じ道をショーに向かう。

たどり着いた場所はジャズクラブというよりも高級ホテルで、ここまでくると、
マナーやホスピタリティは完璧で、逆に敷居が低く感じられる。
糞まみれの乞食の東洋人でも優しく対応してくれそうな、オープンさがあった。

どこかのアメリカから来たバンドが、大してそれが聞きたい訳でもなさそうなホテルの宿泊客に、
スタンダードを演奏していた。さすがに上質の演奏でも、広い場内にはどっか退屈な雰囲気が漂っていた。

ぐああ、こりゃプリンスホテルのディナーショーやんか。
とちょっと場違いな会場を途中で抜け出す。

最終日、残った金で髪を切りに行こうと、鞄のポケットに偶然残っていた
50ユーロ紙幣を持って美容院を探しに出かける。

道ばたで、いかさま手品師がサクラの仲間と一緒に大げさな見せ物ギャンブルをしている。
あまりに手品が馬鹿馬鹿しかったので、気休めに見入る。
三つのカードをシャッフルして、どれが当たりか。
といったマギー司郎でもやらないような手品である。

馬鹿馬鹿しすぎて、野次をとばす。アタリはこれでしょ。絶対これだよ。
とカードを指差すと、当たったら倍額になるいかさま賭博に参加することになっていた。
50ユーロ紙幣しかなかったため、ついつい出してしまった最後の散髪代が、
ほんの数秒でなくなってしまった。

げ。。。と昨日の鳩の冷たいクソが心に再び降ってき た。一旦その場を離れるも、
もう一度戻って、いかさま手品師に
「頼むからあーーー。さっきの金返してええええ。
これじゃ日本に帰れんわあ。」 と乞い願う。

「じゃあもっと金おろして、賭けで取り返せやこらあ。
日本だったら歩いて帰れるやろうが。」
と一向に譲る気配なし。
追い出されるも三たび戻ると、コーヒー飲みながらくつろいでいた手品師に、

「おっさん、じゃあわかった。仏陀のキーホルダーあげるから。
これは本当にお宝だから。30ユーロでどう。さっきの50あるでしょ。それでえ。」と、
もう懐にもぐらんばかりの馴れ馴れしさで、お願いするも、
その親父、仏陀とコーヒーカップを持って逃げようとするので、
「じゃあただで良いよー。あげるよー。」と言い放つと、
今度は本当に奥に消えて行った。

近所の店の人もあきれ顔で、「そりゃゲームだからね。」と一言。
盗人に追い銭。

そうすることで、なんとかゲームの点差を縮めなければ気が済まなかった。

「セラヴィ」というフランス語の決め台詞があるが、
この二週間をその言葉で締めくくるには、あまりにもぴったりすぎる。

人間は同じ間違いを何度も繰り返すように出来ているらしいが、やはりその通りだと思った。
四勝六敗かな。という采配もこれまでの人生とこれからの人生を妙に照らしているような気がする。

二週間で、たくさん味わった敗北感やグッドラックの数を思い出しながら、
今回の旅行を大雑把にまとめる。帰りのエールフランスの機誌で、
奇しくも、骨董屋で気休めに手に入れたキーホルダーと同じく、シッダルタの逸話が。

修行によって悟りに到達するのに、苦行に耐え忍ぶよりも、瞑想を選んだ。
という若かりし仏陀の逸話が載っていた。めくら滅法な身体トランスよりも、
瞑想 すなわち「パンセ」という哲学の基本形のすすめを、
改めて、東西の両側から挟み撃ちで教わる。

最後にトランジットで数時間立ち寄って、結局地上に足をつけることの無かったソウルも含め、
計5カ国の首都を移動したことになる。

ヨーロッパ人は何千年も前から、
移動しながら生き延びてきた民族である。

日本はといえば、ご存知のとおりである。

東京にせよ、欧州にせよ、どこかに住居を定めるよりも、
限りない往復を続けることが欧州から学ぶべきことなのかな。と帰国後思いかえした。

5.普段レッスンを受けている先生

suriya先生、helene 先生

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